巨椋池干拓地、通称「巨椋(おぐら)」は京都を代表する探鳥地のひとつで、京都市伏見区、宇治市、久御山町にまたがる広大な農耕地です。夏から秋にかけて通過するシギ・チドリや冬期の猛禽類を目当てに、近隣他府県からも多数のバードウォッチャーが訪れます。
干拓前の巨椋池は府内最大の池で、水域面積は約800ヘクタール、宇治川の遊水地として洪水時の水を一時的に溜める役割を果たしていました。池の東側を奈良電鉄(現在の近鉄京都線)が走っていて、昭和10年代には車窓から池を眺めたることができました。この池が食糧増産のために、昭和8年から16年にかけて干拓され、面積634ヘクタールの水田に生まれ変わりました。
「コメ余り」による減反政策の結果、現在の干拓地は以前のような一面の水田ではなく、野菜畑やビニールハウスが混じった農地に変わっています。ところどころにある休耕田がシギ・チドリの貴重な中継点になっており、これらの休耕田は今後も残してほしいものです。
巨椋を訪れるシギ・チドリは、留鳥のタマシギ、ケリ、イソシギ以外に、コチドリ、ムナグロ、トウネン、ヒバリシギ、アオアシシギ、クサシギ、タカブシギ、タシギ、チュウジシギ、オオジシギなどで、ツルシギ、オグロシギなども記録されています。
シギ・チドリを見つけるポイントは、水が張ってあって少し草が生えている(隠れ場所)休耕田です。警戒心が強い鳥たちなので、少し離れたところから双眼鏡やスコープで探し、徐々に接近するのがコツです。
なお、干拓地には日陰がありませんので、シギ・チドリのハイシーズン(8~9月)には日よけの帽子と水筒が必須です。できるだけ朝早くから探鳥を始め、10時ごろには切り上げるようにすれば熱中症の恐れも少なくなります。
巨椋の田植えは5月末~6月初旬と遅いため、シギ・チドリの春の渡り時期にはまだ水田に水が入っておらず、探鳥には不向きです。
冬になると、干拓地に集まるドバトやスズメの群れを狙って、オオタカ、ハイタカ、ハヤブサ、チョウゲンボ
ウ、コチョウゲンボウなどの猛禽がやってきます。以前は、コミミズクが毎年数羽越冬していましたが、圃場整備による乾田化が原因で餌のハタネズミが激減したため、近年はほとんど見られなくなりました。
巨椋で見られる冬鳥には、他にカシラダカ、オオジュリン、ニュウナイスズメ、ミヤマガラス、コクマルガラスなどが挙げられます。
夏期には、アマサギ、ゴイサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギといったサギ類が多数見られますが、乾田化によって冬期のサギは激減しました。
現在の干拓地には何本もの幹線道路が走っており、以前ののんびりした田園風景は見る影もなくなりました。
近年、野鳥撮影のために多数の車が駐車されたことから、農家の方が警察に通報してパトカーや白バイが出動する事態が発生しています。また、撮影者が農地内に侵入したために、農家の方が野鳥を追い払うという事態も起きております。巨椋干拓地は農地であり、「ファーマー・ファースト」です。農作業を妨げないよう、マナーを守って探鳥・撮影してください。
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