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トラツグミ

①トラツグミ(撮影:会員)
生 態

名前の通り、黒と黄色の班が特徴的なツグミ。
山地で繁殖し、積雪のある地方のものは暖地へ移動する。
京都府内でも冬期に市街地の公園や社寺林の薄暗い地面で採餌している姿が見られる。
その際、腰を上下に振る独特の動きをする(動画図鑑②参照)。
春から夏、夜~早朝に「ヒョー、ヒョー」という気味の悪い声でさえずる(動画図鑑①、下段の「鳥ビア」参照)。
御所のヌエ退治の伝説はこの鳥と言われる(「鳥ビア」参照)。

大きさ・体色
全長:29.5cm 雌雄同色 
出現頻度
〇:京都府内で見聞の機会が比較的多い
渡り区分
留鳥:年間を通して京都府内に生息している鳥
学 名
Zoothera dauma
英 名
White's Thrush
ヒタキ科
京都府RDB
月別記録回数(主に2000~2015年に報告された記録のみを月別に集計したもの)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
回数 25 39 32 10 3 6 2 1   2 4 4
写真図鑑
②トラツグミ(撮影:会員)
③トラツグミ(撮影:野村明)
動画図鑑
①トラツグミ(さえずり)(2017年3月12日・京都御苑)
②トラツグミ(ダンス)
鳥ビア

ヌエ伝説
『平家物語』にヌエという妖怪の話が出てきます。
平安時代末期、御所で毎晩のように不気味な声が響き、恐怖におののいた天皇が病気になったため、弓の達人・源頼政が退治した。その妖怪は、顔が猿、胴体が狸、手足が虎、尾が蛇、そして声は鵺(ぬえ=トラツグミ)のようであった…
確かに、トラツグミは夜中に「ヒョー、ヒョー」と気味の悪い声で鳴きます。また、現在も毎年冬になると京都御苑に数羽がやってきます。
 
このヌエ伝説には続きがあります。
都の人々はヌエのたたりを恐れ、死骸を船に乗せて鴨川に流した。その屍が淀川の下流に流れ着くと、周囲の村人はたたりがないようにねんごろに葬り、鵺塚(ぬえづか)を造って弔った…
その鵺塚が大阪の都島区に残っています(左の写真)。わざわざ塚を造ったいうことは、ヌエ伝説が根も葉もない作り話ではなく、何か実際の出来事があったということではないでしょうか。
 
不審者? 幽霊? UFO?
ある女子大の寮の周辺で夜な夜な口笛を吹く不審者がいるという通報が警察に入りました。また、山梨県のある地域で「幽霊の声が聞こえる」という噂が広がり、子どもたちが夜トイレに行けなくなりました。さらに、神奈川県丹沢近くの温泉で毎晩UFOのような音がするという騒動がありました。
警察が調べたところ、いずれも犯人はトラツグミだったそうです。この鳥は「ヒョー、ヒョー」と不気味な声で鳴き、時には「キーン」という金属的な音に聞こえます。それが不審者の口笛や幽霊の声、UFOの音と勘違いされたのです。
丹沢のUFO騒ぎについては作家の渋澤龍彦も以下のように言及しています。
 
「このニュースを読んで、私は思わずにやりとした。私は北鎌倉の円覚寺の裏山に住んでいるが、じつは、もう数年も前から、毎年のように、この季節に.トラツグミの鳴声を聞いているのである。明け方に近く、「ヒョー、ヒー」という声がする。最初のうちは、どこかで誰かが、深夜にブランコにでも乗っているのかと思った。アンマさんの笛のようだとも思った。じつに不気味な、何とも寂しい声である」。
 
平安時代には妖怪に(上の「ヌエ伝説」)、現代は不審者や幽霊、UFOに間違えられる可愛そうな鳥です。

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