南方から渡ってくる夏鳥。
京都府内では4月中旬~5月上旬に低山や市街地の公園などで渡り途中の個体が見られる。
繁殖地は大江山、青葉山、八丁平、芦生、比叡山など。
よく通る声で「キョロイ、キョロイ、コキーヨ、キョコキョコ」などと高らかにさえずる(動画図鑑①②参照)。
山地では9月下旬~10月下旬にも南下していく個体が観察できる。
月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
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回数 | 28 | 28 | 25 | 16 | 2 | 4 | 2 |
高村光太郎の詩
高村光太郎が「クロツグミ」と題する詩を残しています。
クロツグミなにしやべる。
畑の向うの森でいちにちなにしやべる。
ちよびちよびちよびちよび、
ぴいひよう、ぴいひよう、
こつちおいで、こつちおいでこつちおいで、
こひしいよう、こひしいよう、
びい。
おや、さうなんか、クロツグミ。
クロツグミのさえずりはどちらかといえば賑やかで、ここに書かれたような寂しいイメージはありません。
光太郎は優れた彫刻作品や詩を残しましたが、戦争賛美の詩を書いたことから戦後は自責の念に駆られ、岩手県の山中に隠遁して7年間独居生活をします。その中で作られたのが上の「クロツグミ」。
この作品について、詩の研究家・伊藤信吉は以下のように書いています。
いかに自己処罰であっても、たった一人の山小屋暮らしは孤独そのものである……そういう精神的孤独の人の耳に、黒ツグミの鳴きごえがきこえる。自分がその黒ツグミなんだ。「こひしいよう、こひしいよう」は、同時に「さびしいよう、さびしいよう」に他ならなかったのである。
同じ鳥の声でも、聞く人の境遇や精神状態によって、明るく楽しい声に聞こえたり、寂しく物悲しい声に聞こえたりするということでしょうか。
光太郎の心境を想像しながら上の動画1の声を聞くと、確かに胸が締め付けられるような寂しい声に聞こえます。