紅葉が美しい秋の芦生研究林は、様々な鳥たちが通過していく渡り鳥の一大中継地でもあり、これまでに留鳥も合せて95種が10、11月に記録されています。
渡り鳥を観察しやすいのは標高630m程の長治谷(ちょうじだに)で、落葉広葉樹林に囲まれた小さな湿地帯とそれに隣接したススキ原、サワフタギなどの低木林を鳥たちが利用しています。10月下旬から11月初旬の早朝、夜間飛び続けていたホオジロ類やツグミ類の群れが、夜明けと共に鳴き交わしながら次々上空を通過する光景や、休息のためにススキ原や周辺林内へ急降下してくる光景は一度見たら忘れられないほど印象深いものです。種によって少しずつ芦生を通過する期間が異なるため(表1参照)、時期によって見られる種が変わってきます。
例えばノジコは主に10月中旬に、アオジとクロジは10月下旬から11月初旬に通過します。どちらもススキ原や周辺の低木林で休息と採餌を行うため、林道や作業所前の芝地から容易に観察できます。11月初旬にはマミチャジナイなどのツグミ類も多数観察されますし、 年によりアトリ、マヒワの大群が見られることもあります。アオジほど多くはありませんが、ムシクイ類やノゴマ、ミヤマホオジロ、カシラダカ、ルリビタキ、カヤクグリ、ベニマシコなども毎年通過しています。
また、ヤマヒバリ、オオマシコ、アカマシコ、ベニヒワなどの珍鳥が見られたこともあり、ムギマキも少数ですが毎年周辺の林で確認されています。小鳥の渡りは午前10時頃までには終了して観察しづらくなりますが、日中にはカケスやタカ類の渡りが観察できます。なお、長治谷のススキ原は2007 年にシカに食べられて一度消滅してしまいました。その後、シカの侵入防止柵(ネット)によるススキ原の復元が行われ、現在植生がかなり回復し、渡り鳥による利用も以前と同様に見られるようになってきています。
*文中の画像や地図は、クリックすると大きくなります。